北山 暁亀

きたやま ぎょうき    栃木
空間をはみだしてゐる石鹸玉 
行く秋の支点・力点・作用点 
のうのうと生きて万朶の花の下 
さびしくて鞄に詰める冬銀河 
「猛犬注意」秋霖の中に廃屋 
夕焼けや想ひ出がとほせんぼする 
空蝉の声なき声のするあした 
浅春の鍵穴に挿す月明かり 
さくらさくら電子ピアノのシが出ない 
明け方の浅夢のごとく金魚死す 
曼珠沙華此岸の闇を焦がしけり 
遺伝子の記憶の隅の冬林檎 
ブラバンの少女が息を継ぎて夏 
夕焼は私雨の壁の先 
立ち止まる靴に纏ひし冬夕焼
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