いのうえ けいこ 千葉
- 句集『雪ぼたる』(文學の森)
- 句集『森の在所』(文學の森)
でで虫や老いて語らふ子のなくて
めいめいに好きなパン買ふ巴里祭
花火の穂ちりぢりに消ゆパリ祭
敗戦日の朝も飛び立つ特攻機
碧空に彩なす垣や濃紫陽花
木槿咲く庭をうしろに引揚げし
秋深しエッフェル塔の立ち上る
裸木の炎となりてゆく夕べ
冬銀河もの言ひたげな母の佇つ
城跡の日暮れ狐火待って居る
妹のうしろ姿や春時雨
ドガの踊り子足高く上げ春を呼ぶ
デーモンに魂売りたし春闌けて
野遊びやいつもとなりに亡き妹が
春の果てボードレールの華ひらく