くろさわ まさよ 千葉
- 句集『水尾のかたち』(本阿弥書店)
- 共著『現代俳句を語る』(遊牧俳句会)
奈良に霧まくらことばに灯を点す
巻尺の元へ戻らず開戦日
春蘭咲く見知らぬ町の数しれず
虹薄れゆく軸足を確かめる
足跡は記憶の深さなぎさ秋
正論のように冬ばらが一輪
天網に綻びあらん昼蛍
癒しふと飯桐の実のいつもの空
すすきかるかやさらさらと誰かの忌
言葉とは吹かれしままの芒原
昨日が遠し寒月の痩せてきし
自負という重さぼうたん崩るるは
紙に裏おもて晩夏にうしろ髪
夏茱萸まっ赤昭和の時間を摘む
望郷のひとつに花野いつも日暮